2024/01/23 14:46



味噌、醤油、漬物、納豆…。


日本では古来より、世界に誇れる独自の発酵食文化を築き上げてきました。


なかでも石川県は「発酵王国」と呼ばれ、伝統的な発酵技術により作られた数多くの郷土料理があり、全国的に有名です。


今回の記事では、石川県がどのようにして発酵食文化を発展してきたのか、代表的な発酵食品の紹介も兼ねて解説していきたいと思います。

<日本の発酵食品、その特徴は?>


世界にはヨーグルトやワイン、ピクルスなど様々な発酵食品がありますが、日本が世界でも有数の優れた発酵文化を持つ理由のひとつが「麴菌」です。


「麴菌」は日本や東南アジアなど湿度の高い国に存在しますが、日本では特に麹菌を積極的に利用して数々の発酵食品を生み出してきました。


麹菌は味噌・醤油・みりん・日本酒などを製造する際に使われます。

いずれも和食には必要な食材ですので、麹菌が日本の食文化を支えているといっても過言ではありません。


<なぜ石川県は発酵王国なのか?>


石川県のある能登半島は三方を海に囲まれ、夏場は高温多湿となるため、食品の腐敗を防ぐ加工技術が昔から発達していました。

なおかつ、降雪が多く長い冬を乗り越えるためにも保存食を確保する方法が必要であり、保存のきく発酵食品が石川県の食文化を支えていたのです。


また、石川県では祭礼の日に親戚や友人、お世話になっている人を自宅に招いてご馳走をふるまう「ヨバレ」という風習があり、祭りの時期に向けて発酵食を作って備えておく生活リズムが確立されています。




<石川県の有名な発酵食品>


日本海に面した石川県では魚介類が豊富に獲れることもあり、水産発酵食品の種類の多様さが最大の特徴です。


以下に石川県の名産としても知られる主な発酵食品を挙げてみます。


・いしり


イカの内臓を塩漬けにして醗酵・熟成させたもので、タイのナンプラーやベトナムのニョクマムと同じ「魚醬」の一種です。


主に能登町で製造されており、原材料も「イカの内臓と塩のみ」といたってシンプルです。


イカで造られるものを「いしり」、いわしやサバで作られるものを「いしる」と呼び分けています。


イカを丸ごと閉じ込めたような濃厚な味わいと独特の香りを放ち、非常に塩分が強く、醤油と同じく刺身や焼き物にかけたり、煮物に加えることもあります。


・かぶら寿司


塩漬けしたかぶに切り込みを入れて鰤などを挟み込み、米麹に漬け込んで発酵させた「なれずし」の一種で、れんこんの挟み揚げのような見た目をしています。


米麹がもたらす優しく豊かな味わいに酸味のアクセントが効いていて、石川県民の冬のご馳走や正月料理としては定番の郷土料理です。


文豪・泉鏡花の作品「寸情風土記」にも「蕪の鮨とて、鰤の甘塩を、蕪に挟み、麹に漬けておしならしたる」という記述が登場します。


・ひねずし


塩漬けにした魚と米飯を塩漬けにして乳酸発酵させたもので、寿司の原型といわれています。


チーズのように濃厚な甘みと優しい酸味のバランスがとれた味わいが特徴で、魚を長期保存するための保存方法として非常に優れています。


石川県の能登地方でのみ作られている郷土料理であり、春先から漬け込んで夏祭りの時期に食べるという文化が根付いています。


・こんか漬け(魚の糠漬け)


「こんか」とは金沢の方言で「米ぬか」を指し、魚を塩漬けにして米糠と米麹に漬け込んだ保存食です。


米糠と米麹を両方使用しているため、塩味・旨味・甘みが入り混じった独特の味わいがあります。


こんか漬けの材料には鰯や鯖、鰤などが用いられ、中でも福井県では鯖を糠漬けにしたものを「へしこ」と呼んでいます。


また、江戸時代から明治時代にかけて、大阪~北海道を西廻りで往復していた「北前船」が運んでくるニシンを糠漬けにして保存する文化もありました。


・フグの卵巣の糠漬け


フグの卵巣を2年以上塩漬けと糠漬けにして解毒し、旨味を凝縮させた珍味であり、石川県内の許可を得た製造業者しか作ることが許されていない発酵食品です。


フグの卵巣にはテトロドトキシンという猛毒が含まれており、本来食べることができません。

ところが1年の塩漬けを経ると卵巣の毒は10分の1にまで除去され、さらに1年以上糠漬けにすることでほぼ無毒の状態になります。


なぜ長期間塩漬けおよび糠漬けにするとフグの卵巣の毒が抜けるのか、そのメカニズムはいまだに解明されておらず、まさに「科学を超越した先人の知恵」といえます。


・米飴


「米飴」は米を麦芽で糖化させた昔ながらの甘味料です。


砂糖の代わりや和菓子のつや出しに使われるのをはじめ、パンに塗ったりヨーグルトにかけるなど、ハチミツに近い感覚で使う人が多いようです。


喉が痛い時や咳が出る時など、のど飴の代用としても使われてきました。


石川県のほか鹿児島県、高知県などでも名産品として人気があり、それぞれの地元で獲れたお米を使うことによって特色を出しています。


<まとめ>


以上、石川県の発酵食文化について紹介いたしました。


冷蔵庫の無かった時代、発酵という化学変化をうまく利用することで長期間保存可能にするという技術を経験則で編み出してきた先人の努力や工夫があるからこそ、日本の食文化が発展してきたわけですね。

これからもファームデジでは石川県はもちろん、全国各地の食文化を伝え、繋げていきたいと思います!